愛情は、なぜ時に人を苦しめるのか

「愛情があるのに、うまくいかない」 カップルカウンセリングの場で、よく語られる言葉の一つです

By Junko Tomoe, メンタルヘルスカウンセラー

相手を大切に思っている。関係を壊したいわけではない。 それなのに、パートナーと顔を合わせれば、同じ衝突が繰り返される。そのたびに、少しずつ何かが削られていくような感覚がある。 愛情があることと、関係がうまくいくことは、必ずしも一致しません。そして、この問いに向き合うことは、恋人やパートナーとの関係を見つめ直すだけではなく、自分自身の内側を深く知ることでもあります。

試すようなことを言って相手を揺さぶる。自分の正しさを主張する。傷つくのを恐れて心を閉ざす。「どうせ分かってもらえない」と、伝えることを諦める。 相手を攻撃したいわけでも、関係を壊したいわけでもない。それなのに、なぜか同じ反応が繰り返されることがあります。 近づきたいほど距離を置き、失いたくないほど言葉を失い、分かってほしいほど強く伝えてしまう。 その逆説は、一体どこから来るのでしょうか。

「なぜ、あの言い方をされると、こんなにも反応してしまうのか」 「なぜ、同じ場面になると、いつも同じように言葉が出なくなるのか」 その問いは、相手への批判ではなく、自分自身への深い問いかけでもあります。 目の前で起きている衝突の奥に、まだ言葉になっていない何かがあるのかもしれない。そう考えてみることから、関係の見え方が少しずつ変わり始めることがあります。

安心という、静かな土台

カップルカウンセリング(夫婦カウンセリング)は、「どちらが正しいか」を裁く場ではありません。二人の間で何が起きているのかを、少し離れた場所から一緒に見つめていく場です。 二人の間に「安心して言葉を置ける空間」が育まれるとき、パートナーとの関係には、少しずつ変化が訪れます。 言い争う「反応」ではなく、穏やかな「対話」が増えていく。自分を守ることだけに精一杯になるのではなく、相手の疲れや痛みにも自然と目が向くようになる。 「私が正しいか」「あなたが間違っているか」という二者択一ではなく、「二人にとって、今ここで何が必要なのか」を考えられるようになる。

それは、無理に自分を変えることではなく、むしろ、関係の中で強く働いていた防衛や緊張が少しずつ緩み、本来その人が持っている優しさや思いやりが、自然な形で戻ってくる感覚に近いのかもしれません。 成熟した愛情とは、強い情熱や大きな言葉だけではなく、「相手が安心して隣にいられるように」という、日常の小さな配慮の積み重ねの中に宿るものでもあります。

苦しさは、問いの始まり 

「この関係の中で、お互いの心は、ゆったりとくつろげているでしょうか」 まずは、ここを二人で静かに見つめてみること。 今、苦しさの中にいる場合、その苦しさは、パートナーシップが終わりに向かっているサインとは限りません。 むしろ、これまでと同じ関わり方では苦しくなってきたからこそ、二人の関係をもう一段深い場所から見つめる必要がある、という問いの始まりなのかもしれません。
隣に専門家がいるということ カップルカウンセリングには、個人カウンセリングとは異なる、固有の体験があります。 セッションの中で、カウンセラーが相手に語りかける言葉を、あなたは隣で聞くことになります。 そして、その逆も起こります。

普段の会話では、「自分への攻撃」として受け取ってしまう言葉があります。あるいは、相手が何を言おうとしているのか理解する前に、自分の痛みや防衛が先に動いてしまうこともあります。 けれど、カウンセラーを介した空間の中では、同じ内容が少し違う質感で届くことがあります。 専門家は、今この瞬間に二人の間で起きている心の動きを微細に感じ取り、専門的な知見からその背景にあるものを見立て、必要な言葉をその場に置いていきます。 そうした介在によって、いつもなら「またいつもの攻撃だ」と受け取っていた言葉が、まったく異なる意味をもって相手に届く瞬間があります。 これまで見えていたものとは違う、パートナーの本当の気持ちに触れる瞬間です。それまで何度も交わしてきたはずの言葉が、ある瞬間、初めて違う意味を持って届く。 二人だけでは辿り着けなかった場所に触れるような体験です。 私はこれまで、カップルカウンセリングの中で、互いの琴線に触れるような、そうした瞬間を幾度も見守ってきました。 そこに、専門家が介在するカップルカウンセリングならではの、本質的な価値の一つがあるのだと思います。

相手を知ることは、自分を知ること

パートナーとの関係の中では、自分でも気づいていなかった部分が映し出されることがあります。 何に傷つくのか。 何を失うことが怖いのか。 何を求めているのか。 どんなときに心を閉じるのか。 そして、どんなときに、本当は相手に近づきたいと思っているのか。

相手を理解しようとすることと、自分自身を理解していくことは、実は同じ問いに向かっています。 自分が何を怖れ、何を求め、どのように人と関係を築いているのかを理解すること。 それは、パートナーとの関係を豊かにするだけではなく、これから自分が、誰と、どのように関わり、どのように生きていくのかを知ることでもあります。 そして、そのような自己理解もまた、自分自身の人生に対する、一つの知性への投資なのだと思います。

REFUGIUM Tokyoでは、東京での対面カップルカウンセリングおよびオンラインでのカップルカウンセリングに対応しています。 「別れるべきか、続けるべきか」という結論を急ぐ前に、二人の間で何が起きているのかを一度丁寧に見つめてみたい方にも、ご相談いただけます。

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